📚クラシックを聴け!(お気楽極楽入門書) - 許光俊
- title: クラシックを聴け!
- authors: 👨許光俊
- date: 1998-09-01
- publisher: 青弓社
- url: http://www.amazon.co.jp/dp/4787271008
- tags
わたしが人生で最も影響を受けた書籍. この書籍を見つけたのは池袋の古本屋, 浪人生のときに河合塾の予備校のそばにあった古本屋でたまたま見つけた.
僕の音楽観に最も衝撃を与えた一冊。音楽の聴き方を変えた一冊。ぜひ、買うべし!19:05 2006/07/28
Literature Notes #
いちばんのキモをえぐり出し余計なものを剥ぎ取って提示する #
だいだいにおいてクラシック音楽の本とは, クラシック音楽がいかに豊かで多彩な面をもっているかをこれでもかと伝えようとするもの. しかし, この本は違う.
多くの作品のなかにひっそりと隠されていた いちばんのキモをえぐり出し, よけいなものをすべてはぎとって提示 しようと思うのだ.
💡音楽作品とは思考や情念の隙のない流れ #
音楽作品は思考や情念の、隙のない流れである。細部の調和である。またこれが西洋芸術の極意である。
これを前にしてはありきたりのコーフンとか感動とかは、単なる生理現象である。
クラシック音楽の超基本 #
- (基本1)芸術作品においては、どんな細部にも意味があり、生きている。細部なしの全体はありえないし、全体のない細部もない。
- (基本2)西洋のあらゆる芸術を貫く感覚、ハーモニーを理解する。ハーモ二ーとは、「それぞれ違うものが同時に存在することで、新たな意味が出てくる」ということだ。個性的な要素が組み合わさって生まれる調和、統一感を理解すべきだ。
- (基本3)前後関係の読める演奏家が重要である。ぜんごかんけいとは「部分を全体の流れから読む」ということだ。
- (基本4)ナマ以外はウソ。人間はさまざまな感覚を持ち合わせており、ちょっとした雰囲気とか予感みたいに、はっきりとはいえないものが存在する。録音は虚構である。
- (基本5)美しさには二種類ある。
- A.感情移入型の美しさ(ディオニソス的)
- 自分を劇や音楽に重ね合わせてしまうこと。
- B.抽象的な美しさ(アポロ的)
- 人間を越えた何かを感じること。(宗教的体験)
- A.感情移入型の美しさ(ディオニソス的)
抽象美こそがクラシックの特徴 #
抽象美がクラシックの一大特徴なのである。
部品や伴奏とメロディがどのような関係にあるか考えてみよう。メロディが勝手に存在しているわけではないことがわかるのだ。
- シンメトリー:安定感
- バランス:安定感
- 繰り返し:空間性、時間性、高揚感、信念、宗教性
クラシック音楽と二元論 #
「二元論」これがクラシックを理解するのに欠かせないキモのひとつなのである。
二元論とは、物事を対立する二つの要素で説明しようとすることである。そして、西洋流二元論の考え方を、音楽の世界に持ち込んだのが、ソナタ形式である。二つの要素(ひとつは男性的、もうひとつは女性的となるのが一般)の対立が、紆余曲折を通じて解決する(いわゆる弁証法)のがソナタ形式である。
いいかえると、混沌->対立->転->調和 という流れである。
そして、「転」は、作曲家の感じ方、考え方、人生観、そういったものがすべて一挙に現れてしまう重大ポイントなのだ。また、ある程度の長さが確保され、その間に紆余曲折がないと、ハッピーエンドは十分に説得力を持たないことも付け加えておく。
西洋クラシック音楽のキモは終末論的ハッピーエンド #
西洋のクラシック音楽の一大特徴は、ズバリ、「ハッピーエンド」(終末論)である。
ハッピーエンドを言い換えれば、調和の究極の状態のことだ。そして、混沌⇒調和のハッピーエンドとは、実は、ユダヤ、キリスト教的終末論なのだ。あらゆる細部までが厳格に規定されており、最後まで理路整然と進行してゆくクラシック音楽はまさに終末論そのものなのだ。さらにいえば、クラシック音楽の歴史はブルックナーで終わった。つまり、宗教としてのクラシックの完成と終焉。
- コンサートホールは聖域
- 作曲家は創造主、神
- 演奏者、指揮者は伝道者、僧侶
聞き手は全身全霊を傾けて、作曲家が何を語ろうとしているのかを聴き取らねばならないのである。
- ないものに対する憧れ
- 調和(なる)を目指す音楽
- 二元論
- 弁証法
- 終末論
- 真理を追究する一種の宗教
これこそがクラシック音楽なのである。さらに、
- 喜びが現在に集中している豊かな世界
- 宗教を必要としない世界
においては、クラシック音楽は滅びるしかないのである。結局、クラシック音楽とは、世界の中の一部というヨーロッパの、これまたごく一部の時代の文化的変種だったのだ。